勝手読み



丼碁(ザル碁)の心




 入門講座に登場する「丼碁(ザル碁)」ですが、当初は「ザル碁」とだけ呼んでいました。
 碁打ちが普段使う言葉としての「ザル碁」のザルは「笊法」のザルと同じニュアンスで、「細かい思慮に欠けた粗雑な碁」を「ザル碁」と言うのが本来の意味だそうですが、子供の頃親父に「ザル碁ってなに?」とたずねたところ、「下手くそな碁は、碁笥(ごけ)の蓋に乗り切らない程沢山石を取り合うんで、笊を持ってきてハマを置くんだよ。だから、へぼ碁をザル碁って言うんだ」と迷回答が帰ってきました。

 私としては親父の説の方が気に入っていて、人に聞かれるとまずそちらを話すことにしています。

 で、「石を沢山取る」ってところがピッタリはまっていると思いましたので、ちょっとお茶目に「ザル碁」と呼び名を付けました。

 その後、「どんぶり碁」との提案があり、漢字で書くと「丼碁」となりとなりますが、「丼」の字が碁盤とハマの姿に見えることから「丼碁」と呼ぶことにしました。
 読み方としては「どんご」です。
 ということで、それ以降は「丼碁(ザル碁)」としています。
 ここで、「丼碁(ザル碁)」のルールを大雑把に再確認しておきましょう。

   【丼碁(ザル碁)】

      ・碁盤に引かれた線の交点に、黒白交互に石を置く。
      ・一度置いた石は動かせない。
      ・相手の石を囲めば取れる。
      ・コウはすぐに取り返せない。
      ・着手放棄(パス)一回ごとにペナルティとして相手に石を一個渡す。
      ・相手より多くの石を取った方が勝ち。



 このルールの特徴は最後の二つです。特に「ペナルティ付きパス」は他の碁と比べて異質に見えます。しかし、次のように解釈すれば受け入れやすいかもしれません。

 
「丼碁(ザル碁)」は石を取ることが目的だが、パスするということは、「その石を取れるかもしれない権利を相手から奪っている」のだからペナルティを科す必要がある。

 もっと平たく言うと、「負けたくない為の着手放棄を認めない」という考えかたです。

 講座の中でも書きましたが、「初手から」とか、「負けそうになったから」とか、むやみにパスされたらゲームとして成り立ちませんから、「パスすると損」をするルールを作ってそれを防いでいます。

 因みに、「純碁」や「中国ルール」は盤上の石の数を争うゲームなので、パスする事は盤上に石を置く権利を放棄する意味になり、打たないことはそのままで損になるためペナルティを科す必要がないのです。

 では、地の数を争う「日本ルール」でのパスはどう考えたらいいのでしょう。

 まぁこの話、実はちょっとややこしい問題を含んでいます。考えだすと頭が痛くなりますし、今日のテーマから大きく外れてしまいますので、また別の機会に取り上げることにします。


前ページ 勝手読みメニュー 次ページ