勝手読み
前回のコラムの中で、「順位を争う碁が嫌いなので強くなれない」なんて書きましたが、あれは見栄です。本当は「弱いので順位を争う碁が嫌い」なのです。 親父から初めて碁の手ほどきを受けて以来、途中数年のブランクが3度ほど有りましたが、かれこれ30ン年にもなります。ブランクの期間を差し引いても延べ20年程は碁を楽しんでいる事になります。 が、一向に腕は上がりません。その理由は幾つか有ります。箇条書きにしてみました。 1.教えてくれた親父がそもそも初心者だった。 まず最初に思いつく手が大抵ヘボ筋なのは、当時の「すり込み」に違いない。 2.当時は将棋の方が面白かったので、あまり熱心でなかった。 なんたって将棋は目の前に目標が有りますから、碁に比べて格段に分かり易かった。 3.実戦の数が少ない。 いままでのトータルでもやっと3桁かなぁ。 4.頭が悪い。 まぁ、これが決定的でしょう。 さて、私の棋力はいかほどかというと、それが良く分かりません。 日本棋院のホームページや「週刊碁」などによくある「段級位認定問題」を試してみると、級位者向けの問題では2~3級と判定される結果になりますし、段位者向けの問題だと2~3段となります。これはどう解釈したものでしょうか。 また、実戦の際に自分の棋力を初段などと申告して打った場合でも、3級と言って打った時でも、どちらでもそこそこ良い勝負になります。 因みに、私の親父は碁の通信講座などを利用していつの間にか腕を上げ、何年か前に4段の免状を取りました。ただし、本人も認めていますが、実力は2段位だと言っています。その親父に最近は負けた事はありません。しかし、ご近所で打つ碁の時、私は3級と言うことになっていて、それでも相手によっては厳しい場合もあります。 と言うことで、段級位を使って私の棋力をお伝えする事は出来そうもありません。そこで、別の方法を試みます。 先ほどの「強くなれない理由、4番」について少し詳しく書いてみます。それで私の実力を見積もってみて下さい。 頭の悪さと言ってもいろいろでしょうが、私の場合、画像パターン記憶能力に問題があると思っています。 私が手を読む際に頭の中に描くことの出来る図は、目の前に置かれている現実の石プラス仮想の石5個位までが限界です。つまり、頭の中で「黒1、白2、黒3・・・」と先読みしたとして、白6を考えているあたりでは黒1の石のイメージがぼやけてしてしまうのです。 分かり易い例として、下図のシチョウを考えてみましょう。 |
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図1![]() |
右下の白石はシチョウに抱えられていますが、左上方面に白石が置かれると逃げ出しが可能になります。 |
図2![]() |
つまり左図の×点の何処かに白石が置かれると、 「シチョウアタリ」 となります。 |
図3![]() |
例えばこのようになると、白石が逃げ出せば取られずに済みます。 この判断は「読み」ではありません。「知識」です。 従って、まともに読めば何十手も先にある石でもシチョウアタリか否かの判断はできます。 |
図4![]() |
しかし、この様になると事情が違ってきます。 この例はまだ簡単ですが、それでも10個位は現実に無い石を頭の中に思い浮かべなければ、白石が逃げ切れるかどうかの判断は出来ません。 私の頭の中だけで、この白が逃げられると自信を持って判定するには結構集中力を必要とします。 なにしろ、思い浮かべている石の半分はぼんやりとしか見えないのですから。 |
図5![]() |
この例は上図より一つ遠くに石が置かれています。 それだけの違いで、今度は白が捕まってしまいますが、頭の中だけで考えると間違えそうです。 実戦ではもっと複雑な形が現れますが、私はシチョウアタリがとっても苦手です。 |
苦手は他にもあります。ヨセも大の苦手です。 なぜなら、ヨセの大きさを判断するには出入り計算をしなければいけません。出入り計算には最低でも二つの図を頭の中に思い浮かべて比較する必要があります。大抵は仮想の石が5個以上関連します。とても正確には計算できません。 と言うことで、私の場合頭の中に思い浮かべた画像イメージを保持する必要がある場面では非常に弱くなります。 対戦相手の実力にシンクロしてしまう傾向があるのは、私の打つ手が読みに裏付けされているのは稀で、ほとんど場合勘に頼っている為かもしれません。 従って、当然のことですが、本当に強い人にはコロッと負けてしまいます。 もっとも私は碁を打つとき相手の棋力をあまり気にしません。むしろ相手の性格というか気質みたいなものに注目します。「弱気」、「強気」、「脳天気」、いろんなタイプの人が居ますが、打っていて面白いのはやっぱり「脳天気」な人でしょうか。なぜなら私自身も「脳天気」で、お気楽な碁に波長が合うからでしょう。 結局私の棋力は???です。 まぁ、「脳天気」ってことで、棋力ならぬ気力でお許し下さい。 |
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