勝手読み
碁盤には「辺」や「隅」が存在しているが故に、碁がとても面白くそして深いものになっているのは間違いないでしょう。 ところで、碁盤を宇宙に見立てる考え方が有りますが、その場合「辺」や「隅」はどういう位置づけになるんでしょうか。 「碁盤は宇宙だ」って話を初めて聞いたのはいつだったろうか。たぶん碁を知って間もない頃だったとは思いますが、はっきりとは覚えていません。 この言葉、なぜか分かりませんが(私にとっては)妙に説得力が有って、聞いた瞬間に何の疑問も無く納得してしまい、その為か今まで特にその意味を考えた事などは無く、「辺」や「隅」は「宇宙の果て」だ、位にしか考えていませんでした。 しかし最近、次の思い付きがフッと頭に浮かびました。 碁盤が宇宙をあらわすとするならば、碁盤の端は「大地」なのではなかろうか。 もしかしたら、「そんなこと、常識だろう」なんて言われてしまうかもしれませんが、私にとってはこの考えは新鮮です。 碁盤の端が大地だとすると、第一着が隅の星周辺に打たれるケースが多いのもなんとなく分かるような気がします。 やっぱり人間は大地から飛び立つものなんですねぇ。大地から飛び出して第一歩を標す場所としては、隅の星周辺は二つの方向の大地を両にらみにし、さらに天空を目指すにしても、あるいは地上に戻るにしても、その間合いが丁度良い、なんて、チョットこじつけでしょうか。 さて、今回のテーマは、「碁盤の端が無くなると何が起こるか」です。 碁盤の端を無くす方法は二通り有ります。一つは、いわゆる「トーラス碁」で、もう一つは「∞路盤」です。「トーラス碁」についてはまたいずれ取り上げてみたいと思いますが、今日は「∞路盤」について考えます。 「∞路盤」は当然ですが現実に作ることが出来ません。しかし、頭の中に描くことは出来ます。 今回は図が使えません。皆さんの想像力に期待します。 ∞路盤での碁を想像して下さい。はたして、碁というゲームが成立するでしょうか。 ∞路盤には無限個の空点が存在しますから、なにか制限を設けない限り一度打ち始めたら一生打ち続けなければいけなくなってしまいます。そこで、石の数を有限個(例えば黒白100個ずつ)に限り、それを打ち尽くしたらお終いにするとします。 では早速打ち始めるとしましょうか。 ∞路盤には端が有りませんから、全ての空点は同じ性質を持っています。従って黒の第一着はどこに打っても同等です。 問題は二手目以降です。白は何を基準に二手目の着点を選べば良いのでしょうか。それを考えるには、∞路盤での碁の目的を決めなければいけません。 このサイトではポン碁、丼碁(ザル碁)、純碁、そして囲碁を扱っていますので、それぞれについて考えてみましょう。 まずポン碁から。ポン碁は相手の石を取ることが目標ですが、∞路盤では有限路盤以上に石を取るのは難しいだろうと想像できます。なぜなら、有限路盤の場合石が取られない為には活きる必要があるのに対し、∞路盤では端に追いつめられる心配が無いため必ずしも活きる必要が無いからです。 また、有限路盤ではいずれ着手可能点が無くなるためパスのペナルティが発生しますが、∞路盤ではその心配もありません。従って、対局者が負けたくないと思えば絶対に石を取らせない事も可能であろうと推定出来ます。つまり、∞路盤ではポン碁は成立しない可能性が大きいと言うことです。 次に丼碁(ザル碁)と純碁を考えます。有限個の石を使い切るまでがゲームの範囲であるということは、丼碁(ザル碁)と純碁が∞路盤では全く同じものだと言うことを意味します。つまり、どちらの碁も相手の石を取らなければ勝敗が付きません。しかし、一個でも石を取られたら最後、その差を縮めるのが非常に難しい事はポン碁と同じです。従って、丼碁(ザル碁)や純碁も∞路盤では成立しにくいと言えます。 いよいよ囲碁です。囲碁の場合は地を争います。ポン碁、丼碁(ザル碁)、純碁では相手の石を取ることがゲームを成立させる必要条件でしたが、囲碁では地を作るために必ずしも相手の石を取る必要が無いという点が重要です。従って、囲碁では∞路盤でのゲームが成立する可能性は大きいと思います。ただし、∞路盤での「地」の定義が上手くできればの話ではありますが。 ところで、中国ルールは∞路盤に適用できるでしょうか。答えは「NO」です。そもそも中国ルールは有限路盤限定です。最後の勝敗判定が∞路盤に対応出来ません。なぜなら、∞路碁盤の総交点の半数はやはり∞だからです。 結局、∞路盤でゲームが成り立つ可能性があるのは、日本式の「地を争う碁」だけだと言うことになります。 武宮先生の碁盤中央を重視する宇宙流も、碁盤の端がなければ成立しない戦法です。しかし、∞路盤での「地を争う碁」は純粋に「中央で地を作る技術」の競い合いになる可能性が有ります。 この技術の中に、もしかすると囲碁がさらにワンステップ進化する為の方向性が隠されているのかもしれません。 |
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