勝手読み



日本囲碁規約考
(プロローグ)




 下図はネット棋院を主催されている酒井九段が出題された問題図です。
 (残念ながら、ネット棋院は2017年ころ閉鎖されたようです)
 「現在白番で、ハマは無く、黒5目半のコミ出しです。どちらが何目勝ちでしょう。」という問題です。

問題図1
(注)この図は酒井九段の出題された原図とは厳密には異なっています。原図では右下隅J1が黒石となっていますが、そのままですと黒31子白28子で「ハマなし」(及び、おそらくこの時点まではパスなし)の条件に合いません。

 原図のままでも日本囲碁規約を適用する限りは問題ありませんが、例えば中国ルールなどで考える場合は影響が出てしまいます。
そこで、本コーナーではJ1を白石に置き換え、黒30子白29子としました。

尚、原図を確認したい方は下記を参照してください。

ネット棋院 → ネット棋院フォーラム → 碁界を語る → テーマ№52
(ネット棋院は閉鎖されたため、現在は参照できません)

 この図を日本ルールではどの様に解釈できるのか、入門者レベルでも理解できるように説明しようという試みを前回のコラム「眼から鱗」から始めています。
左下隅の白が、前回説明した両ウッテガエシの所で登場した形になっています。つまり、ここに黒からのコウダテが準備されているという仕掛けです。
で、次にいよいよ右上隅の形について考えて行こうという段取りです。

 この説明をするに当たり、出来るだけ「日本囲碁規約」に直接踏み込まないようにしたい、というのが私の基本方針でした。しかし、右上の形(コウの一種で
一手ヨセコウという)の扱いを説明するのにはどうしても「日本囲碁規約」の細部に触れる事は避けられないという結論に達しました。
そこで、出来る限りかみ砕いた表現をするために、入門者の気持ちで(というか、入門者の常識を使って)この規約を読み直し、解釈してみることにしました。

 その結果大切なことに改めて気づかされてしまいました。それは、

 
「日本囲碁規約」は碁に習熟した人の対局の際に生じうるトラブルを解決する為の規約である。

ということです。つまり、碁の常識を既に良く知っている人が読むことを前提に書かれているのです。
碁の常識を知らない入門者がいきなり「日本囲碁規約」を読んでも理解できるようには書かれていないのです。
これは、表現をどんなに工夫しても、常識を持たない入門者用に書き直すことはほとんど不可能なのではないだろうか、と思えるのです。

 そこで、予定のコースからは少し外れてしまいますが、入門者がこの規約を読むとき何が分かりにくいのか、またそれを碁の常識ではどの様に解釈するのか、という視点に立ち、日本囲碁規約の思いっきり勝手な意訳を試みるという形で暫くの間話を進めて行くことにします。

 次回は「第一条(対局)」について考えます。


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