勝手読み
第一条(対局) 囲碁は、「地」の多少を争うことを目的として、競技開始から第九条の「対局の停止」、までの間、両者の技芸を盤上で競うものであり、「終局」までの間着手することを「対局」という。 これが日本囲碁規約の第一条です。 この条文、今まではなんとなく読み流していたんですが、今回入門者の目線で、そして碁を楽しむ一愛好家として改めて読み直してみると、なかなか味わい深い文章だなと思いました。 この条文のキーワードを赤字で強調しておきましたが、その中でも「」で括った言葉が重要だぞ、と規約の作成者は言っているようです。で、さらにその中でも特に扱いが違うのが「対局の停止」です。ここだけは頭に「第九条の」と付いていて、別に詳細が書かれた条文が有ることを示しています。 「地」や「終局」もそれをテーマにした条文が有るのですが、それらにはなぜか「第何条の」はついていません。 このことは規約の作成者が読者に対し次のことを訴えているのだろうと思うのです。 この規約を読む人は「地」や「終局」についてはもう既に良く知っているであろう。しかし、「対局の停止」はこの規約で初めて導入する新しい概念なので注意して読んでほしい。 と言うことで、この文章はまるっきり入門者向けではありません。いきなり「地」なんて言われたって何のことか分かるわけがありません。 普通、ゲームのルールブックと言えば、まずそのゲームで使う道具は何か、そしてその役割はどうか、などゲームを構成する基本的要素の説明から入り、次にゲームの目的、ゲームの進め方といった段取りを踏むのが一般的です。 しかしこの日本囲碁規約はチョット違います。私はこの第一条は一種の決意表明みたいな物であると思っています。 では、何を決意しているのか。それは2つ有ります。 (1).日本の囲碁は「地」を争うのが伝統であって、この伝統は守り抜くぞ。 (2).日本の囲碁は単に勝敗を争うものではなく、盤上での技と芸を競うものだぞ。 おそらくこの規約が作られた頃は、世界の中での日本の囲碁の立場が色々な意味で問われていた時代だったのではないでしょうか。それ故に、規約の先頭にどうしてもこの決意の宣言が必要だったのであろうと解釈しています。 以上が私の第一条の意訳です。この条文に関しては入門者は個々の言葉の意味にこだわる必要はないでしょう。なんとなくそんなものかなという程度で良いと思います。 さて、次からが本来のルールのお話です。次回は囲碁の基本構成について、第二条から第五条までを取り上げます。 |
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