勝手読み
第七条(死活) 1、相手方の着手により取られない石、又は取られても新たに相手方に取られない石を生じうる石は「活き石」という。活き石以外の石は「死に石」という。 2、第九条の「対局の停止」後での死活確認の際における同一の劫での取り返しは、行うことができない。ただし、劫を取られた方が取り返す劫のそれぞれにつき着手放棄を行った後は、新たにその劫を取ることができる。 本来、盤上の石の死活は両対局者の力量によって決定されるものです。であれば、ルールとして石の死活を定める必要は無いのではないか、そうお考えの方もいらっしゃるでしょう。それは全くその通りです。ですからこの条文も、「この形は2眼活き」とか「この形は中手で死に」とか石の生き死にそのものを定義しようとしているのではありません。 第7条-1の前半は、「対局者が力ずくで争った結果取られなかった石が活き石」ですよ、と定めているだけです。 第7条-1の後半は前半の補足で、「一旦取られる形の石でもその取りあとに取られない石を置ける場合は元の形のままで活き石」である、と決めています。(逐条解説ではウッテガエシの例などが挙げられています。) 要するに第7条-1は、「両対局者が共に活き石であると認めた石が活き石、死に石であると認めた石が死に石」だと言っているのだと解釈してしまっても間違いないでしょう。つまり、同じ形の石でも対局者の力量に依って活き石と扱われる場合と死に石と扱われる場合があり得ると言うことです。 では対局者両者の意見が相違したまま終局しそうになった場合はどうなるのか、つまり一方が活き石であると信じている石をもう一方は死に石であると判断している様な場合はどうするのか。 そんなケースで必要になる手続きが、第9条に定められている「対局の停止時における死活確認」という作業です。この作業においても両者が力ずくで決着を付けるという点は対局中となんら変わり有りません。 で、その「対局の停止時における死活確認」手続き中には、コウの扱いが通常の対局途中のコウの扱いとは異なっていますよ、と言っているのが第7条-2です。 第7条-2の前半では、「対局の停止時における死活確認」手続き中は、「コウを取られた場合どんなに強力なコウダテを使ってもそのコウを取り返すことは出来ない」、と定めています。つまり、「相手がコウダテに応じても、コウを取り返してはいけない」という、この手続き中でのみ適用される特別なルールを定めているのです。 ただし、第7条-2の後半では、「取られたコウを着手放棄によって相手に譲ったにも関わらず相手がコウを解消しなかった場合は、そのコウを取り返しても良い」、と定めています。 もうちょっと厳密に言うと、盤面に取り返すコウが複数有る場合には、「このコウについて着手放棄します」と宣言したコウについてのみ、相手が解消しなかった場合に取り返すことができます。 この第七条は、「日本の碁の肝」を明文化したものだと私は思っています。 日本の碁は「地」を争う形で発展してきました。その歴史の中で、「地」を解釈する為に必要な概ね共通した「石の死活」の概念が長い時間を掛けて育まれてきました。しかし同時に、コウ絡みの微妙な問題もいろいろ発見され、それらについての解釈が人によって異なるという事態も起きてきました。 それら微妙な問題を、歴史的な考え方から大きく外れることなく統一的に解釈するために、一定の指針を定めたのがこの第7条の役割だと思います。 そして、「石の死活」が明文化されたことにより、次回取り上げる「地」もまた明文化が可能になったと考える事が出来ます。 |
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